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翌日の土曜日。キャプテンになる以前なら昼まで惰眠を貪っていた私は、体力づくりでランニングするようになっていた。もちろん自主的な訳ではなく、亮君に引っ張られて......。
「おはよ! ヒロ」
「おは......」
「実は昨日の夜、ヒロ用の特別メニュー考えたんだ」
私に挨拶もさせず、興奮気味に話す亮君。「着いてきて」と、すぐに走り出したので、仕方なく行く先も知らず背中を追った。
向かった先は住宅地の外れのコンクリート工場跡地だった。ブロック塀に囲まれた広場に、ボールの音が響いている。
「須王!」
亮君に呼ばれてこちらを向いたのは、男バレのエーススパイカー、須王君だった。
「女バレのキャプテン、山下寛子だよ。よろしくな」
「ああ。知ってる」
私よりも背の高い須王君は朝日を背に、笑顔もなく見下ろしてきた。
「ヒロ、俺昨日言ったろ? ヒロにしかできないことやろって」
実は一晩寝たら悔しさが冷めた私は、正直言ってどうでもよくなっていた。今まで通りで別にいいや、と。温度差に戸惑いながらも頷いていると、亮君は拳を握りしめた。
「ブロックだよ! ブロックポイント取れるようになったら、かなり強いから!」
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