レギュラー

2/7

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「西校〜、ファイッ」 「オー!」 「ファイッ」 「オー!」  私はレギュラーでないにも関わらず、ランニングの先頭に立って走っていた。二つ結びのおさげが肩のあたりで跳ねる。季節は10月。今月末から春高の予選が始まる。 「山下、速いって!」  後方から、不満そうな吉野(取り巻き)さんの声。「あ、すみません」とペースを落とすと、「落とさんでよかよ!」と張りのある御影さんの声が飛んできた。そのまま隣に並ぶ彼女は息が少し上がっていた。 「キャプテン、体力あるけんねえ」 「走るだけならいつもやってるから」 「全部上手くなっとるよ! は今日実行するん?」 「うん。もう監督に言ってる」  御影さんがニヤリと笑う。私も照れ笑いした。  ひと通りウォームアップしたところで監督がやってきた。私への視線に頷いてみせる。 「今日はレギュラー選考をやり直す。山下がみんなの許可を得たいそうだ」  途端に空気がざらついた。横山さんが後列の私を振り返る。バチバチの付けまつげが睨んできて、一歩後ずさった。それでも固い唾を飲み込んで、震える声を押し出した。 「じ、条件があるの。みんなのアタックを私がブロックできたら、レギュラー入りさせてください」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加