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「ど、どうかな......」
重く垂れ込めた沈黙。耐えきれずに尋ねた声が小さすぎたのか。2年生は私を除いた4人、1年生は5人。みんな立ったまま私が配ったプリントを見つめ、誰一人口を開かなかった。
昨日、亮君と一緒に幾つも動画を見て、体育館が使えない日にできる練習メニューを考えた。グラウンドの隅で、男子部員たちは早速そのメニューを始めている。
本当ならまずは顧問に相談するところだけど、今日に限って職員会議で遅れるとのこと。
「まあ、やってみようか。せっかく『キャプテン』が考えてきたんだし」
リーダー格の横山さんが低い声で言った。彼女がそう言わないと始まらないことをみんな知っている。
「......じゃあ、お願いします」と首をすくめるように頭を下げると、横山さんの取り巻きの一人が私の右肩を押した。
「山下さんは走ってきなよ。これ、3人1組じゃん。余りが出るっしょ」
「あ、はい。そうですね」
願ったり叶ったり。これで今日も走ればいいだけ。除け者はいつものことだ。
「どうせこのメニュー、山下さんにはできそうにないし」
横山さんの冷笑はすぐにチーム全体に広がり、一年生たちまで笑っている。気温は暑く、グラウンドの熱に灼かれそうなのに、背中がヒヤリとした。
早くこの場を離れたい。震える足でその場を去ろうとした時......
「ちょっと、待ち」
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