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*2* 目覚め
それは、春先にまでさかのぼる。
「──俺の姉さまだ! 姉さまを返せぇッ!」
つんざくような絶叫が、真っ先に聞こえたものだった。
「だまれ! 御刀さまをかどわかそうなど、言語道断!」
どうやら目を血走らせ、暴れている黒髪の少年を、大の男4人がかりで押さえ込もうとしているところらしかった。
狭苦しくほこりっぽい蔵で、なにがなんだかわからないが。
「あのう、すこしよろしいですか?」
とりあえず、ひざもとに落ちた刀袋と白鞘から視線を上げ、挙手をして。
「暴力はだめでしょう! こらぁーっ!」
かん高い少女の声がひびき渡った刹那。
青く澄みきった空を引き裂いて、どんがらがっしゃん! とひとすじの稲妻が蔵に落ちた。
当たり前だが、周辺一帯が一時停電した。
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