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「ところで、吉田様」
「あなた、私の名前を知ってるの?」
ふいに名前を呼ばれ、クレーム客であった吉田は目を見開く。浪越屋カードによる購入履歴から顧客の名前を事前に調べておくことは、お客様相談室に籍を置く身としては基本中の基本だ。
さらに深く片頬にエクボを刻むと、笑は丸い目に力を込めて力説する。
「存じ上げておりますとも。
お中元お歳暮の時期はもちろん、節目のお祝いなどにも常々当店の品を使っていただき、ありがとうございます」
「そ、そうね。だから、文句を言いたいわけじゃないのよ。きっと、他の客も勘違いしちゃうだろうなって……」
「ご親切な心遣いに感謝を申し上げます。吉田様、こちらのお写真に載っている具材でしたら、地下一階の惣菜コーナーにて一式揃えることができます。産地のしっかりした品ばかりです。本日ご購入いただきましたら、先程のラーメンギフトと御同送という形でお送りすることが可能です」
「まぁ、そうなの……」
若干の興味を引かれたのか、吉田は提案する笑の方へと体を傾ける。ここぞとばかりに、笑は一押しのメリットを伝えた。
「それと、本日は食品館のみ『浪越屋カード』ポイント十倍デーでございます」
「まぁ、そうなの!」
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