#1 TAKUBO

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 羽野の奥隣りで自ら申告したのは、最年少の志村(シムラ)慎之介(シンノスケ)だ。俊敏かつ軽快なタイピングで目に見えぬ相手との会話に没頭しているが、決してオンラインゲームやSNSで遊んでいるわけではなく━━ネットに寄せられるクレーム対応に勤しんでいるのだった。 「じゃあ、今フリーなのは……」 「はい。田窪、行きまーす!」  片頬にトレードマークのエクボを覗かせ、田窪(タクボ)(エミ)は立ち上がる。学級委員に立候補する優等生さながらに、その右腕はピンと天井に向かって伸ばされていた。 * 「田窪(タクボ)銀山(カナヤマ)羽野(ハノ)志村(シムラ)……」 「『浪越屋百貨店お客様相談室クレーム対応係・特別班』所属メンバーの頭文字を取って、『タカハシ』ってわけ。さぁ、私たちも持ち場へ戻ろう!」  我がことのように誇らしげに鼻を膨らませると、古参アルバイト・古本は、あたかも取締役のように同僚である新人アルバイト・新田の肩を叩き鼓舞するのだった。 * 「お待たせいたしました。ご案内係の田窪です」
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