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「ツートップの一人? もう一人いるんですか?」
「もう一人は、婦人部門の王子よ」
「婦人部門の『ぷりんす』?」
*
「エクボ~、また上層部に手柄をアピールしたらしいじゃん」
賑わい始めた社員食堂にて。
早々に昼食を終えた笑に話しかけたのは、同期一の出世頭である荒尾響だった。
「田窪です。アピールなんてしてません。風評被害で訴えますよ」
「女性管理職コースの最年少記録まっしぐらじゃん。褒めてんだよ」
頭一つ背の高い響から頭頂部を撫でられそうになった笑は、拳を避けるボクサーのように顔を傾け防衛する。
「触らないでください。セクハラで訴えますよ」
「何でもかんでも『訴える』って言うなよ、胸や尻を撫でたわけじゃあるまいし。ダチョウ倶楽部かよ」
「その考えが、すでにセクハラ……」
説教しかけるや、笑の背後から幾つもの黄色い声が飛んできた。
「荒尾王子〜。こっちで一緒に食べましょお~」
婦人服フロアの店子ブランドに派遣されている、年配マネキンたちだ。
「すぐに参りまーす……しょうがない、オバチャンたちを撫でとくか」
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