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へその緒を取られ俺の目の前に差し出された。俺の…赤ちゃん…
男の子で、俺はその赤ちゃんを胸に恐る恐る近づければ吸い付いてちゅぱちゅぱと音を立てて飲んでいる。
「名前…リヒトって付ける」
「光の子…ですか」
「うん…父親はヴァニスって事に…してもらってもいい…?」
うっすら目を開けた時に見えた紫色の瞳は、あの領主の瞳の色。それを思い出しただけで俺はこの子を愛せなくなってしまいそうで、俺はヴァニスを見つめた。
「小生は体の交わり無く父親になってしまったか」
「俺…ここに残って生きていこうと思う」
「小生は構わないが…何故だろうか」
色々考えたが、これが最善策だと思うから。
赤ちゃんを連れて旅なんて危ないし、他の男の子供を守りながらの旅なんて二人も良い気はしないだろう。だから俺は思った事をぽつりぽつりとヴァニスへ話した。
「ならこの赤子は小生が預かろう」
「え?でも…」
「いつかその甘美なる身体を小生にも味わわせてくれるという約束付きだ」
ふっと笑みを浮かべられ自分の唇の前に人差し指を立てた。俺は小さく頷いてリヒトをヴァニスへ渡したが、リヒトは俺に手を伸ばしてぐずっている。
「ごめんなリヒト…パパとお留守番…出来るな?」
俺が撫でてやれば指を咥えながらヴァニスの服を掴む。しばらく休んでいればノックが聞こえ、ヴァニスが返事をすれば扉が開きクレイが現れた。
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