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それだけを頭に入れると、いつも通りに着替え、いつも通りにテレビのスイッチを入れる。食事をしようかどうしようか少し考えてから、食事をしないと慶次に怒られることを思い出し、レトルト食品を漁る。
ストックにカレーがあった。皿にご飯を盛り、カレーをかけてレンジに入れた時、玄関チャイムが鳴った。
どうせ勧誘か何かだろうと思いつつ、玄関ドアを開ける。チェーンがガチン、という音を立ててピンと張った。
「はいー?」
隙間から覗き込み、相手の顔を確かめる。
「こんばんわ」
特に表情も無く、普通の挨拶をしてゆっくりと頭を下げた男には、どこか見覚えがある。肩にかかる長めの黒髪と、黒目がちな奥二重。太めの眉は意志が強そうだ。
「……こんばんは」
将也がそれだけ返すと、彼は顔を上げた。
「ケイちゃんは? 帰っとる?」
「や……まだですけど」
「まだ? 今日帰るとか言ってたけど……」
彼は顔を顰め、少し迷っているように視線をあちらこちらに走らせる。
「……あ、君がケイちゃんの?」
同居人? と続くのだろう。将也が頷くと、彼は少々控え目に言う。
「待たせてもらっても、いいかな」
「え……えーと……」
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