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昔から自己主張の弱い将也は、常々慶次から知らない人間と話をしないように言い付けられている。まさか子どもでもないし、そこそこにしか守っていないけれど、中に入れろと言われると考えてしまう。
将也が戸惑っていることに気付いたのか、彼は慌てて断りを入れた。
「俺、怪しいモンじゃないよ。ノアールのカエデ。楓山竜祥。知ってる……よね?」
「あ……、は、い……」
確実には思いだし切れず、曖昧に答える。
「ノアールの! ノアールのCD持って来てよ、写真載ってるし」
本当に取りに行って確認するのも、失礼だろう。そう気付き、一歩引き掛けた足を戻してチェーンを外す。
「ありがとさん」
彼はにこっと笑い、片手を上げて靴をぬいだ。
急いで、慶次が散らかしていった雑誌類をまとめ、小さいテーブルの上を開ける。座ってもらったは良いが、冷蔵庫を開けても大した物は入っていない。ビールの一本でも出すと良いのだろうが、生憎そこまで酒好きではない将也のせいでストックがない。
「コーラで、ええですか?」
仕方なく、一本だけ残っていた缶コーラを手にして彼に尋ねる。
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