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02 同棲
元々自殺する気で部屋を纏めていたから、引っ越した人みたいに部屋には何もないから、男ば 家賃滞納して夜逃げでもする気かよ ゙と呆れたように、部屋を見て呟き、
私がぐずって泣いてる間に、鍵を掛けて腕を引いたままその場を離れた。
黒塗りの高級車の助手席に乗せられ、シートベルトを着けられてから、高速道路を走ること30分ぐらい、そろそろ彼の機嫌が悪くなってきた。
「 いい加減、泣き止め。うるせぇ… 」
「 うぅ……だって 」
「 だっても、クソもねぇだろ。ったく… 」
この人はかなり口が悪い。
あの人ぐらい悪いと思うから、
尚更…怖くてビクッと肩を震わせていれば、いつの間にかパーキングエリアに車が止まり、早々に車から降りて出て行った彼を見ることなく、溢れる涙を両手で拭く。
「 うぅ、っ…うぐっ…… 」
死ねなかった…
それも、大家さんに迷惑かけて…
何故か、家から離れてるのも謎過ぎて、
感情の整理がつかなくてグズグズに泣いては、鼻水を服の袖に付けたりして荒くなる呼吸のまま泣き続けた。
「 っ…ぐっ、ぅ、うっ…ひっく、ッ、う… 」
時々しゃっくりをし、肩を揺らしていれば運転席の方の扉は開き、男が入って来た音に尚更、大きく身体は強張る。
「 ほら… 」
「 うっぐ……ッ…なに、これ…… 」
ほら、と言われるままに差し出された手元を見れば、其処には綺麗に渦状に巻かれたバニラのソフトクリームがあった。
「 見て分かるだろ。生乳百%のソフトクリームだ 」
「 …なんで 」
「 買って来たんだから黙って食え 」
「 ………… 」
流石に見ただけで、生乳百%なのは分からないけど…態々買って来た事に、彼とソフトクリームを交互に見た後に、涙を袖で拭いてはそっと両手を伸ばし受け取る。
「 ありがとう…いただきます…… 」
貰ったからには御礼を言う癖があるから、ちゃんと伝えてから、小さく舌先を伸ばして舐める。
「 ん!?お、いしい……! 」
甘過ぎないサッパリとした濃いミルク味に驚いて、二口目を舌先を伸ばして多めに掬ってから舐めとり食べれば、案外自分の分も買っていた男は、私を見下げながら自身のを食べ、車のエンジンをつけ直した。
「 それ食ってろ 」
「 んっ…! 」
器用にコーンの部分を持ち替えたりして、車を走らせれば左手でハンドルを持ち、右手でソフトクリームを持ち、バニラ部分を食べては運転する。
その横顔をチラッと見上げるも、やっぱり見た目が怖いから顔を背けて、食べる事に意識を戻す。
喉はスッキリとするし、久々に買ったソフトクリームを食べた事で涙はすっかり止まっていた。
「 東京だ…… 」
「 俺はこっちに住んでるからな。あんなクソ田舎にいるわけない 」
「 ………じゃなんで、マンションあるの…? 」
「 人から押し付けられた場所だ。大家として代わったのも半年前。そしたら…家賃滞納してる奴が居るって知ったんだ 」
「 うっ…… 」
前の大家さんが誰かも知らなかった…。
滅多に来ないで、掃除する人だけに任せてたのは知ってるから。
そしたらいつの間にか代わっていたなんて…
尚更、申し訳無さがある。
喉に詰まるような感覚に、残りのコーンの部分を食べて紙を丸めれば、左手を向けてきた彼にそっとそのゴミを渡せば、車の中にあるゴミ入れへと捨てられた。
「 ……でも、私…東京で暮らす、お金なんてないよ…? 」
「 俺の客室を貸してやる。気持ちが落ち着いたら仕事を探せ。直ぐに見つからなくても俺の家だから生活費には困らないだろう 」
「 え……そんな、人様の…家に 」
「 家賃滞納されてる方が迷惑なんだよ。使ってねぇ部屋だから構わん。それに俺は仕事で普段いないしな 」
「 う…… 」
確かに、家賃払えずにずっと居るより…
御世話になった方がマシだろうけど、本当にそれでいいのかと疑問になって彼を見上げるも、顔が怖いからそれ以上言えなかった。
「( この人…多分…ヤ○ザ関連の人。目で人を殺せそう…… )」
血がよく似合いそうぐらいに、怖いから視線を外して黙ってることにした。
スカイツリーを横目に、車の通りが多い場所やら過ぎて、六本木にある高層マンションに来た。
「 ……ふぇ 」
「 さっさと入れ 」
「 はい…… 」
顔を真上に見上げても、どこが最上階なのかイマイチ分からないけど、言われたままに中へと入る。
彼が指紋認証やらで入っていくも、
私が出る時や入る時…無理なんじゃない?と思う。
こんなにセキュリティーガッツリしてて、出入りが自由に出来るとは思えないんだけど。
エレベーターに乗り込み最上階へと上がる。
「( 最上階のフロアだ……。この人…超お金持ち?? )」
あんな、とは言っては悪いけど…
都会から離れた田舎のボロいマンションの大家さんだから普通かな?と思ったけど、多分そんなこと無い…
こんな場所に住めるのは、富豪位だと想像していれば、玄関は指紋認証とカードキーで開き、先に中へと入る。
「 靴は脱げ。そのままでもいいが、家政婦を頻繁に入れるのが好かないからな。履いてない 」
「 う、うん… 」
「 スリッパ…サイズねぇな。とりあえず、履いとけ 」
「 えっと、お邪魔します 」
差し出された大人サイズ、それも男性用ぐらいの大きなスリッパを履いて、先に玄関の鍵を締めて廊下を進む彼をそっと追い掛ければ、通路は何も置かれてなくてシンプルだし、目についた吹き抜けのリビングも広々として、殆ど物が置かれてない。
最低限のものしかなくて、モデルハウスとかにある雑貨みたいなものが一切ないぐらい、生活感がない。
「( 唯一…キッチンには色々ありそうだけど…… )」
「 ほら、さっさと来い 」
「 は、はい! 」
この人の生活は、キッチン周りと寝室ぐらいなのだろうと予測をして、呼ばれるままに着いていけば、通路の左奥にある扉の前に立った。
「 此処が使ってない客室だ 」
「 ふぁ…… 」
「 押し入れに未使用の布団一式がある、それを使え。非常食やら水やら置いてるから好きに飲み食いしろ。無ければ買い足すだけだからな。トイレは斜め前、汚したらちゃん掃除しろ。御前の糞なんて掃除したくないからな 」
私が住んでた部屋より大きいと思う、寧ろあの家ぐらいはありそうな程に大きいから、ここを使っていいのか戸惑うけど、色々言われることに驚いて頷く。
「 は、はい! 」
「 何か質問は? 」
「 特に… 」
「 じゃ、説明を続ける。着いて来い 」
「 はい! 」
非常食は食べて飲んでいい…本当にいいのか分からないから触らないでいよう。
そう思いつつ、彼が立ち去る背中を追い掛ける。
「 此処が脱衣場であり、洗面所。ガラス扉を開けば風呂だ。入ってたら入り口の扉に鍵かけろ。さもなくば、ガラス張りだから、見えるぞ 」
「 わ、わかった… 」
「 まぁ、死体を見せたがった御前には裸ぐらいどってこと無いだろうがな 」
「( そんな、事ないけど… )」
一言一言が余計だし、意地悪いとちょっとだけ睨めば鼻で笑われて、彼は次の場所へと歩く。
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