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「ただいま、カナコ」
ここはステキマンションという築三十年のマンション。四〇二号室(福原)の扉が閉まった。
「おかえりなさい。今日は遅かったわねぇ。またテストの添削?」
「まぁそんなとこだ。今そこまで来たら雨降られちゃってさ、参ったよ。悪いな、上着が少し濡れちゃった」
「あらあら。預かるから脱いで。このくらいならハンガーに引っかけとけば大丈夫」
カナコは福原から上着を預かりハンガーに引っ掛けた。タオルで軽く水気を拭き取ると、膨らんだポケットに気がつく。
カナコはポケットからクッキーを取り出し、瞬きひとつせず無表情でじっとそれを眺める。そしてじわじわと、ドライアイスのような冷気を漂わせ始めた。
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