マイホーム

2/2

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「あなた……。これなぁに?」  低い声。背を向けててもカナコの怒りは地を這うように伝わる。そして福原は咄嗟に全てを悟った。 「ややッ、違うよ、違う! 絶対ない! それはね、生徒が持ってたんだ。持ってたから、俺は持ってきちゃいけないぞって注意しただけ。ホ〜ントだって。だからそれは俺が貰ったんじゃなくて没収だよ、没収」  カナコは福原をキッと睨みつけ、クッキーをメンコのように床に叩きつけた。そしてスリッパで何度も何度も踏みつけ怒りを露わにする。 「うそ! バレンタインでもないのに日常的にこんなもん持ってくるなんて。許せない!」  カナコの怒りは、我慢できなくなった餅みたいに猛烈に膨れ上がった。腹の虫とクッキーは粉々に跡形もなく、床が薄茶色に染まる。      
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加