腹の虫

作戦

「リーダー！　腹の虫呼んで！」

　神志名コウメは学校から帰るなり、ぶすっとした声を放つ。

「お呼びでしょうか、コウメ様」
「明日、百匹！　百匹用意して」
「毎度ありがとうございます。結構大量にぶっ込みますねー。相当イヤなやつなんですか？」
「そうね。うちのクラスの溝口マチエってやつ。アイツが羽柴くんに近づいてウザいのよ。ましてアタシより細いのが気に入らない」
「いいんですか？　お友達なんでしょ？　前は〝悪党にしかやらない〟って言ってませんでしたっけ」
「マチエだって充分悪党よ。私が羽柴くんを気に入ってることくらい知ってるのに、最近やたら近づいてくるのよ。
　だってね。教科書なんか忘れてもないのに、忘れるはずなんかないのよ。あの優等生が。なのに忘れたとか嘘いって隣の羽柴くんと机くっつけちゃってさッ。
　わざとよ、あれ。あれは絶対わざと！　アタシへのあてつけもいいとこだわ。許せない」

　１年Ｂ組、溝口マチエ。高校最初のターゲット。