深夜の急変した患者さん

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深夜の急変した患者さん

「…ふぅ……」 アパートに帰り荷物をそこら辺にポイッと置くと、そのままバスルームへ向かった。 初めての夜勤。 緊張したのもあって、その時は眠気なんてなかったんだけど… 「ふぁぁ…っ」 仕事も終わり自分の家に帰った途端、緊張の糸も切れたのか急に眠くなってきちゃった。 服を脱いでバスルームに入ると、熱いシャワーに思い切りかかる。 ジンと肌が痺れる温度に、覚めない頭がだんだんと冴えてきた。 シャワーのお湯にかかりながらそのまま顔を洗うと、チクリと口元に鈍い痛みを感じた。 「ん…っ」 そっと指をあてて痛みの原因を探っていると、口の端の小さな傷痕に触れた。 そうだ。 昨夜、遅刻しないようにと急いで職場の廊下を走っている時に、当直ドクターとぶつかった際に持っていたミルクのストローで刺しちゃったんだっけ。 「…………………」 そういえばあのドクター…不思議な雰囲気を持ってたなぁ。 拭った私の血を舐めた時はビックリしちゃったけど。 それでなくとも、男性なのに現実離れしたような色気と妖しさを持っていた。 名前、なんて言うのだろう。 また会えないかな。なぁんて。 今夜は、さすがに2日続けて当直って事はないもんね…。
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