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力強く抱きしめてくれていた美東先生が、ゆっくりと離れた。
「だから…わかってほしいんだ。
美夢を、手の届かない所にやる事を」
「美東先生……っ」
ボロボロとこぼれ落ちていく涙に、先生の顔が歪んで見えた。
私が…悪いんだ。
私は、美東先生の側にいる事も許されない存在になったんだ――――…!!
その時。
次々と溢れ出す涙とは反対に、ポタポタと落ちていった点滴液が全て落ちきった。
それはまるで、この瞬間に私と美東先生の関係が終わってしまったかのように…。
「腕…貸して」
美東先生はテープで固定された点滴針をゆっくりと外し、代わりに注射用の小さなカットバンを貼ってくれた。
「落ち着くまでここで休んでいてもいい。
今日は日曜日で外来もないから、時間も気にする必要もない。
鍵は後で僕がかけるから、君はいつでも適当に帰ったらいい」
それだけ言うと、先生は診察室のドアを開け出て行ってしまった。
…私ひとりを残して。
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