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「…………はぁ…」
ため息1つつくと、ドアノブから手を離した。
やっぱりダメかぁ。
それとも、316号室に行けば?
でも仕事じゃないのに、真夜中に病棟なんて行くわけには…
そう思ってクルリと振り返ってみた時だった。
目の前が闇色一色で、いくら外を映す窓や薄暗い廊下と言えども、それなりに見えるものはあった筈なのに、真っ暗で何も映らなかった。
まるで闇の中にでも迷い込んでしまったのか…と思った瞬間。
「…こんな時間にここに入りたいのなら、わたしの許可が必要なのだけどね」
声を聞き、私はその闇色の正体が真っ黒なコートを羽織ったあの男性だと気付く事ができた。
「まさか君の方から来てくれるなんて思わなかったよ」
彼は真っ黒いコートの懐からマスターキーを取り出して院長室の鍵を外すと、ドアを開けて私を中へと招いた。
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