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私、内科医の筧直太郎と申します。現在、大学病院の勤務医をしています。 ここ一、二年の外出自粛の影響もあり、心理的、精神的に影響を受けていらっしゃる患者さんが顕著に多くなっています。毎月のように楽しんでいた旅行に行けない。コンサートを観ることもなくなった。レストランでの食事も会社帰りの居酒屋も以前のようには行けない。誰もが楽しみにしていたことがほとんど否定されてしまった。 こんな日々がいつまでも続くものですから想像以上にストレスがたまっています。私の勤める大学病院にも毎日悩みを抱えた患者さんが大勢いらっしゃいます。近頃は各種の依存症と思われる患者さんが多くなっています。どうしても中毒性のあるものになぜか引かれていくのです。特にニコチン依存症やアルコール依存症の患者さんが目立っています。 とはいえ、私も医師の端くれなので治療には全力を挙げています。世間では「依存症は筧直太郎に」ともいわれているようです。プライドにかけて治してみせます。完治した時の感謝の言葉が嬉しくてがんばっています。ただ、アルコール中毒患者だった人から今度一緒に飲みに行きましょうと誘われたときには正直、笑えませんでした。
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