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しかしその姿を前にしたイーサンは、このとき酷く異様な印象を受けた。
「な……まさか。本当にこんな」
実のところ、イーサンの知る医者らは口を揃え、病ではなく超越的な問題……つまりはオカルト的なものがあるとした。それも確かにこの姿を見せられればという具合であったのだ。
だからこそ彼は苦悩した。
何かに取り憑かれた、そんな馬鹿なことあってはいけない。もとよりそういった超自然なことを持ち出してはキリがないと、医者を志し救うことに専念してきたのだから。
しかしながら、そうとしか言いようの無い事例を彼は一度だけ目の当たりにしていた。これはその当時と酷似しており、何も出来なかった自分をフラッシュバックさせしめたのだ。
ただ今回も同様とするには尚早。そう考え、前もって収集したアイリーンの情報を念頭に、実際に症状の現れたいまの様子を綿密に調べ始めた。
ところが……通常考えられぬ程に血走る瞳孔、パペットのように奇怪な痙攣を起こす四肢、声にもならぬ音を発する姿。全身の青ざめた色……これに似たような病はやはり思い当たらず、これ疑わしきをとうとう見つけ出すことは叶わなかった。
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