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暫し固まったエドワードの手は徐に胸元から下り、食い縛る口は儚げに崩れ始めた。
「……どうして、っこんな」
エドワードはただ呆然と肩を落とす他なかった。名のあるイーサンまでもが、とうとう匙を投げた……そう思ったからだ。
失意のエドワードの背にイーサンの声がかかる。
「猶予をくれ。別に方法が無いか探ってみよう。それまで安定薬を置いていく。ただ、処方は言ったことを守ってくれ」
オカルトを厭忌するエドワードに直接言うことは憚られるが、ある人物に協力を仰げば救える見込みはあるはず、そう考えての言葉だった。
「…………」
「ウォルターさん、まだ私は――」
「もういい……希望を見出したと早とちりした俺が馬鹿だった。さあ、もう帰ってくれ」
「いや違うんだ、私は――」
「かえってくれ!」
イーサンの鼻からは、もどかしさとして息が抜かれた。
「……そうか。また、くるよ」
サシャに案内されるイーサンの背後では拳を床に打つ音が響く。
「結局、医者は役立たずだった……くそーッ!」
やるせなく首を振ったイーサンは、ある覚悟を決めてそこを後にするのであった――
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