前編【タイトルロール】

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 暫し固まったエドワードの手は徐に胸元から下り、食い縛る口は儚げに崩れ始めた。 「……どうして、っこんな」  エドワードはただ呆然と肩を落とす他なかった。名のあるイーサンまでもが、とうとう匙を投げた……そう思ったからだ。  失意のエドワードの背にイーサンの声がかかる。 「猶予をくれ。別に方法が無いか探ってみよう。それまで安定薬を置いていく。ただ、処方は言ったことを守ってくれ」  オカルトを厭忌(えんき)するエドワードに直接言うことは憚られるが、ある人物に協力を仰げば救える見込みはあるはず、そう考えての言葉だった。 「…………」 「ウォルターさん、まだ私は――」 「もういい……希望を見出したと早とちりした俺が馬鹿だった。さあ、もう帰ってくれ」 「いや違うんだ、私は――」 「かえってくれ!」  イーサンの鼻からは、もどかしさとして息が抜かれた。 「……そうか。また、くるよ」  サシャに案内されるイーサンの背後では拳を床に打つ音が響く。 「結局、医者は役立たずだった……くそーッ!」  やるせなく首を振ったイーサンは、ある覚悟を決めてそこを後にするのであった――
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