前編【タイトルロール】

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前編【タイトルロール】

「イーサンを呼べ!」  月の見えぬ空を背にした縦長の窓が風雨でしきりに音を立てるなか、金色の髪とコバルトの瞳を持つエドワードの声が雷鳴のように轟いた。  メイド服を着た褐色のサシャはタオルを絞る手を止め、駆け足で一階へと降りてゆく。  そしてエドワードはペルシャ絨毯の敷かれた天蓋付きのベッドを前に、やつれた顔を一層顰め始めた。  その視線のすぐ先には、横たわったまま細い四肢をバタバタと痙攣させる娘、アイリーンの姿。 「クソ。いったい何故こんなことに……しっかりするんだアイリーン、もう大丈夫だ医者が来る。  お前が酷くなってから呼んできたヤブなんかではなく、ちゃんと名のある医者だ。  だからしっかりしろアイリーン!」  ベッドの反対側では、悲痛の面持ちを涙で染めるアレッサが口元で手を震わせていた。 「ああどうかお願い、アイリーン。あなたならきっと大丈夫よ、頑張って……」  そう言って黒髪を揺らし、切に願いながら跪いたときだった。駆け込んでくる足音が広がる。 「ウォルターさん……!」 「来たか、早くこっちに! いったい何が起こってるか君なら分かるだろ。教えてくれイーサン!」
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