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 ジャックみたいなやつは街にゴロゴロといる。ゴミ箱って表現は否定できないどころか、ゴミ箱にだって失礼。ガイドラインをネタとバカにできないゾーンはいくらでもある。普通に生きることもできるけど、ちょっと道に迷ってしまったら帰ってこられないぐらいにね。  おれだって人にケチをつけられない生活をしている。親がないガキが生き延びる方法なんて、ゴミ以下の人間性を持たないとやっていけない。暇があればかっぱらい、呑気な旅行者を襲撃(ジャンプ)。汚い大人に媚びて仕事の斡旋をしてもらえば、ドラッグや恥なんかを売った。差し出せるものは命以外なんでも出した。うまくやっていると人はいう。実際、おれは運よく要領よく生き延びた。ボロイ部屋を借りて、ベッドに足を伸ばして眠れて、好きな時にぼけっとできる。なかなかのものだろ。  おかげでおれは金を少しばかり持っていたり、いなかったりしても、いつでも余裕があった。飯のことだけをガツガツ考えなくていいといえば綺麗だが、ようは生命力やハングリー精神に欠けていた。毎日ガキの溜まり場になっている廃ビルではしゃぎ、疲れたら空を見上げる。できてしまった余裕のせいで目的はいつもなかった。生まれ育った街柄、未来や将来なんて夢見たくもなかった。今日、何をすればいいのかよくわからなかった。明日、何をしようか考えるのも面倒だった。  ちくちくと時計が回り、おれは動かないのに時間だけを押し流す。針の進む先に終わりはない。くるくるくるくる、とまることなく時間の経過を教えるだけ。日々は空白。昨日と今日と明日の区別は何もない。  だからおれはいつでも待っていたし、信じていた。  何をって? そんなの決まってるだろ。  クールでヘビーな冬が終わり、パステルカラーの春がやってくる。  街は暖色を脱ぎ捨ててピンクやライムに衣替え。豪華なロングドレスを身にまとったおねえさんも鳥肌なしで露出を楽しむ。  今冬のシークレット・ガーデンは平和だった。ピリピリした空気もなく、落ち葉のように寂れた雰囲気があるだけ。アンニュイな退屈が雪の代わりに積もっていく日々。暇な時間は飽きても飽きてもやってくる。ダチとつるんで、決まりの店に顔を出して、遊んで、眠って。その時はその時での楽しさがあるのだけど、たまにどうしようもなく疲れてしまう。持て余す。そんな言葉がぴったりくる心境。
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