4.揺れる想い

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「邪魔はしないで」  石嶺さんが声を放った。私ははっと我に返った。 「あなたが上級の龍人だってことは、重々承知してる。でも私たちの行動を止める権利はない。邪魔をするときは、全力で阻止するから」  石嶺さんは鋭い眼で私を見た。後ろの彼は、心配そうにこちらの様子を見ている。 「大丈夫。邪魔はしない。あなたたちの考え方を知りたかっただけ。そしてその考えも、全く分からない訳じゃないから」  正直なところだ。龍戌制度のレールに乗って、今までやってきた。もうここからは抜け出せない気がする。  でも、その中で生きづらさがあることも事実だ。龍人だから反発を受けることもある。本当にいいのか悪いのか。 「今日はどうもありがとう。縁があったら、また会いましょう」  私はそれだけ言い残し、その場を後にした。  埠頭には涼しい潮風が吹いていた。
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