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彼はひと息つくと、無言で門をくぐった。私も仕方なく後に続いた。
彼の背中は怒っていた。何も言わなくても、それが分かった。肩をいからせ、前傾姿勢に大股で歩くその姿は、戦場に向かう赴きだった。
私は怖かった。
これから何が起こるのか、想像ができなかった。
石嶺さんと橘くん。
高校で成績の1・2位を争った2人。
激しい論争が予想される。
できれば会わせたくなかった。2人は今、正反対の位置にいるのだ。分かりあえるはずがない。そんなことは重々承知していた。
でも、私は彼を止められなかった。止められるばずがなかった。それほど、彼の猛然とした姿勢に威圧された。
ここまで来たのだ。
覚悟を決めるしかない。
何が起こっても、見届けよう。
彼が変な行動に出たら、それを止めよう。
それが私の役目だ。
そう自分に言い聞かせて、私たちは大学の事務室へと進んだ。
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