2.新宮理沙の話

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 毎日のように、そんなことを考えてると、すぐに下車する駅に到着する。  私は席を立って、ゆっくりと停車した電車から降りた。彼は変わらず、左の頬を押さて、外を向いたままだった。  今日も声をかけられなかった。  憂鬱と共に改札を出る。  先頭車両から降りた大勢の高校生に混ざって、学校までの坂を上る。龍人たちの列に、私も加わる。 「理沙、おはよう」  同じクラスの晴菜から、声をかけられる。私は笑顔で返答し、晴菜と一緒に教室までの道を歩いた。  龍人の高校生だからって、何も変わらない。ただ、私が龍人じゃなかったら、こうやって晴菜と一緒に登校することなんてなかったのだろう。  今日も普通ではない世界で、普通の生活が始まる。
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