3.救 い

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 一週間後、久しぶりに橘くんに会った。少し痩せた気がした。 「どうだった?」  私は彼に、手ごたえを聞いた。  彼は頭を抱えうなだれ、首を横に振った。 「政治に深く携わっている叔父や叔父の知り合いに会って、現状を伝えたんだ。龍人の立場が危うくなっていることを。  みんな一生懸命に、僕の話を聞いてくれたよ。僕は彼らから期待されているし。  でも、納得する回答は得られなかった。みんな次の選挙のことで、頭がいっぱいなんだ。  ひとまず政権を取ることが最優先課題だって。そうしなければ、政治生命自体が危なくなるから。  その一点張りだったよ。みんな龍人のことよりも、自分の政治家としての職域しか考えていないんだよ」  彼はそう言うと、うなだれたまま動かなくなった。裏切り、失望、絶望。そんな類のものが、橘くんを支配していた。こんなに憔悴しきった姿は、初めてだった。  私は彼を、そっと抱きしめた。
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