3.救 い

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「いいじゃない」  私は彼の肩を擦りながら言った。 「龍人でも、そうじゃなくても、橘くんは橘くんでしょ?」  彼は唖然とした表情で私を見た。 「あなたの努力は私が一番知ってる。 そのプライドの高さも。  好きなこと我慢して、みんなの期待を一身に背負って、それが自分の生きる道だって信じて、ここまで頑張ってきた。  それは凄いことだよ。  他の人には、なかなかできないことだよ。  龍戌制度が無くなったからって、その努力が消えるの?  橘くんは、橘くんじゃなくなるの?  たとえ制度が無くなっても、橘仁は橘仁でしょ?  みんなのために自分を犠牲にして努力ができる。そしてちょっとだけプライドの高い、橘仁でしょ?」  私は、橘くんの眼を見た。  いつもと違って、弱々しい橘くんが、そこに居た。 「別にどうってことないよ。何がどうなったって、私は橘くんが好きなんだから」  そう言って、私は彼に微笑みかけた。  彼の両目に、涙が浮んでいた。  それを見たら、私も我慢できなくなっちゃって。  二人でぽろぽろした。
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