4.未来へ架ける橋

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「そう言えば、もう1つあった」 「もう1つ?」  石嶺さんが首を傾げた。 「今度食事に行きましょうよ。新たな門出を祝して」  僕は石嶺さんに提案した。 「そうね。たまにはいいかも」  石嶺さんは笑った。  以前みたいに、『いや、自分、間に合ってるんで』とか何とか言って、断られるかと思った。  意外にも、石嶺さんはすんなり了承してくれた。  世界は動いている。動き続けている。  川の流れが動きを止めないように、刻一刻と、今この瞬間も。  いい方向に動き続けるとは限らない。  人は誰だって間違いを犯す生き物だから。  でも間違えたなら、それを反省して、また進みだせばいい。  僕らは今、そういうところに立っているのかもしれない。 「じゃ、来週のどこかで」  僕がそう言うと、石嶺さんは照れくさそうに笑って、1つ頷いた。  僕らには未来がある。今のところは。  もう一度、やってみようかな。  サークル活動。  僕は微かに湧いてきた前進する力を胸に秘め、グラスを掲げて、石嶺さんの前に差し出した。  石嶺さんもグラスを掲げ、僕らはささやかに乾杯した。  乾いたグラスの触れる音が、小さな部屋に響いた。
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