3.小池修一の話

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 そいつが毎日のように生意気を言ってくるのに耐えかねて、肩を突き飛ばした。殴ったわけじゃない。殴った後のことくらい、俺でも想像できる。  ちょっと肩を突いただけなのに、そいつは大げさに転んだ。物音を聞きつけた周りの教師が、一斉にこちらに振り向き、飛んで来て俺を取り囲んだ。 「お前…自分が何をしたか分かってんのか!」  教師たちは数名で俺を取り囲み、そのうちの2人から腕を羽交い絞めにされ、俺は指導室へと連行された。周りの生徒たちが面白そうに俺を見ていた。失笑が聞こえた。  その時、俺は理解した。この学校で、俺の自由はない。いや、これからの将来もそうだろう。  龍人と言うだけで、優遇される世界なんてない。優遇されるのは、ほんの一握りの龍人だけだ。  父さん、母さん。ごめん。  俺、あんたたちの望む子供にはなれそうにないや。  その日から、俺は変わった。周りに溶け込むことなく、独りを好んだ。手は出さないが、反発した。俺の周りには、似たような者が集まるようになっていた。  そうして、どうしようもない俺が出来上がった。
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