4.橘仁の話

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 家に着いたのは22時を過ぎた辺りだった。テスト直後ということもあり、今日は割と早い方だ。  僕は鞄を部屋に置くと、食卓へ向かった。母が準備してくれた夕食をいただく。甘辛く煮込んだ鶏肉とサラダ。そして穀物を混ぜたご飯。22時を過ぎているので少量で、かつ消化に良い物を食べる。 「今日の鶏肉はハチミツも入れてるから、柔らかくておいしいよ」  母はそう言いながら、笑顔で僕の前に配膳してくれた。うん、確かにいい香りだ。  両手を合わせ一礼した後、さっそく鶏肉を口に運んだ。ほんのりした甘さが口いっぱいに広がる。柔らかさの中にも、しっかりと味が染みている。 「どう?」 「うん、すごくおいしいよ」  僕も笑顔で母に応える。  成績が良かった後の母は、いつもより機嫌がいい。  僕は手早く夕食を食べ終えると、すぐに風呂へと向かった。風呂から上ったら、今日の復習をしなければならない。僕にはやるべきことが、まだ残っている。
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