4.橘仁の話

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 教室に入ると、ただならぬ空気を感じた。数名の男子生徒が、新宮さんを囲んでいた。 「何やってんだ、お前ら」  僕が教え込まれてきた龍人としての信念が、そう言わせていた。男子生徒たちは僕の顔を見るなり、進行を止め、すごすごとその場を立ち去った。  戻ってよかった。僕が戻らなかったら、新宮さんは何をされていたか。それを考えると、怒りが込み上げてくる。  龍人の中にも、ろくでもないヤツがいるのは知っている。特に下級に属する龍人たちは、その誇りというものがないのか、平気で人を痛めつける。  僕は、そんな世界を変えたい。最上級の龍人という、天から与えられた力を存分に発揮して、誰もが安心して過ごせる世界を築きたい。  僕は選ばれた人間なのだ。そんな想いが、僕を突き動かしている。
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