5.僕と新宮理沙の話

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5.僕と新宮理沙の話

「あの…大丈夫ですか?」  いつもの電車、いつもの窓際に立っていると、突然後ろから声をかけられた。  振り返ると、1人の女性が立っていた。彼女はそう言うと、僕の隣の吊革に掴まった。  ゆっくりと電車が進み始める。 「大丈夫ですかって、何がですか?」  僕はその女性に聞き返した。  何のことだか分からなかった。 「この前、左頬を押さえてるのを見かけて」  彼女は僕の顔を心配そうに見ながら言った。  左頬はまだ少し腫れている。僕はその左頬を擦った。 「えぇ…まぁ」  誰?この人?  いつも同じ電車に乗ってるから見かけてはいたが、こうやって話すのは初めてだ。名前も素性も知らないけど、1つだけ分かってることはある。  この制服。この人は龍人だ。  天下の龍人さまが、僕に何の用だろう?
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