5.僕と新宮理沙の話

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「降りましょう」 「え?」 「あなたが降りる駅でしょう?ここ」  僕はそう言って、彼女よりも一足先に電車を降りた。僕が降りる駅は、もう1つ先だ。彼女はまた戸惑いながらも、電車を降りた。 「あなたは龍人ですよね?1つ言っておきたいことがあります」  駅のホーム。他の龍人たちが、ぞろぞろと改札口へ向かっている。 「はっきり言います。僕は龍人が嫌いです。あなたは正義感とか責任感で僕に謝ってくれたんでしょうけど、そもそも僕は龍人が嫌いなんです」  彼女の表情が一変するのが分かった。  でも僕はやめない。 「だから金輪際、僕には構わないでください。小池さんが謝るのなら分かる。でもあなたに謝られても、はっきり言って迷惑なんです。どうしていいか分からないし」  それだけ言って、僕は改札へと歩き始めた。彼女は両手でカバンを持ち、その場に立ち止まっていた。  言いたいことは言った。彼女の話も聞いた。もうこれ以上、彼女といる意味はない。  もう龍人と関わるのはごめんだ。  ろくなことがない。
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