1.僕の話

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 久しぶりに小池さんを見かけた。だから声を掛けた。すると殴られた。  意味が分からなかった。ただ声を掛けただけ。  小池さんを見て、懐かしさが込み上げた。  僕は笑顔で手を上げながら、彼を呼び止めた。  それがこのざまだ。行きかう人たちは、僕を憐れむような目で見つつ、通り過ぎていく。  みじめ、極まりない。  僕は立ち上がり、尻についた埃を払って、駅に向かって歩き出した。彼の姿はもうない。  僕らは高校生になっていた。再会は6年振りか?6年の歳月は、こうも人を変えてしまうのか?  僕は両手をズボンのポケットに入れ、駅に向かって歩いた。  飲み込む唾液は、血の味がした。
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