11人が本棚に入れています
本棚に追加
昼休み、私は屋上から遠くの街並みを眺めながら、今日のことを考えていた。
勇気を出して、声を掛けた。電車の中で、いつも見かける彼に。少し話をしたかっただけ。でも、全く相手にされなかった。
「僕は龍人が嫌いです」
彼ははっきりとそう言った。私が龍人じゃなかったら、結果は変わっていたのかもしれない。でも仕方ない。私は龍人だから。龍人に生まれてしまったから。
龍人である父と、戌神である母から、私は生まれた。最上級ではないにしても、上位の龍人に当たる。
人に優しく、弱き者を助け、誇りを忘れず生きる。それが私たち龍人の役割だと教えられて育った。それが龍人としてのあるべき姿と、幼少の頃から信じて疑わなかった。
今でもそう。多くの人を助けたい。せっかく龍人として生まれたのだから、そのチャンスをいい方向に活かしたい。
そうは思うけど…なかなかうまくいかない。そして今日の出来事。正直、へこむ。全てが嫌になる。
最初のコメントを投稿しよう!