5.僕と新宮理沙の話

5/5
前へ
/119ページ
次へ
 龍戌制度がなかったら、私はここまで自分に自信を持てていなかっただろう。  元々、引っ込み思案だ。人前に出てしゃべるのは苦手。リーダーには向かないのは自覚している。  それでも人の役に立ちたい。困っている人がいたら、声を掛ける勇気は持っていたい。それだけは、龍人じゃなくても、考えていたと思う。  龍人だから、やれることがある。  一方で、疎まれることもある。  この制度の元に生まれたのなら、それに従い生きていくしかない。私はかなり恵まれた環境に生まれた。それを利用して、私の信念を叶えたい。  じゃぁ、私がやるべきことは何?  そう考えると、必然とするべきことが見えてくる気がした。  大学へ進学し、多くの人を助けられる制度を創る。もしくは、そんな組織を創って、たくさんの同志とともに、世の中を住みよい環境に変えていく。  今は勉強に励むしかない。龍人が闊歩する世の中ではなく、他者のことを想える人が正しく評価される世の中にするために。  私は滲んでいた涙を拭った。そして教室へ戻るために、屋上を後にした。直後、昼休みの終わりを告げるチャイムが、タイミングよく鳴った。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加