1.SとS

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「まあ、座れよ」  小池さんは僕に椅子を勧めると、その斜め右側に腰かけた。僕とはちょうど90度の対面で話す格好になる。 「そう警戒すんなよ。何年振りかな?こうやってまともに話すのは」  小池さんはそう言いながら、後ろにある小さな冷蔵庫から、ペットボトルのお茶を取り出し、僕の前に置いた。  僕は差し出されたペットボトルには触れず、両手を大腿部の上に置いていた。妙な行動に出た時、すぐに反応できるよう身構えていた。  小池さんはそんな僕を無視して、飲みかけのペットボトルコーヒーを飲んだ。 「率直に聞くけど」  口に含んだコーヒーを飲み込むと、僕に本題を切り出した。 「お前、龍人、嫌いだろ?」  小池さんは世間話でもするような抑揚で、単調に言った。  そりゃそうだろ!  僕は声をあげそうになりながらも、ぐっと堪えた。  目の前にいる小池さん自身が龍人なのだ。下手に答えると、後で何をされるかわからない。
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