4.文化祭

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4.文化祭

 その日はいつもより、1本早い電車に乗った。普通ならば、大学生活で初めての文化祭だ。胸ときめくものなのだろう。  しかし、僕の胸は不安でいっぱいだった。  僕は小池さんに言われたシナリオを、もう一度頭の中でイメージした。何度そのイメージを繰り返したか分からない。緊張感が増し、そこに楽しむ余裕などはなかった。  実際のところ、この文化祭で小池さんが何をするのか、具体的なものは知らなかった。ただ、何かとんでもないことをするんじゃないかという、根拠のない予感はあった。  今なら止められる?いや、無理だろう。  歯車は、もう動いてしまったのだ。  電車が駅に着くと、僕は素早く改札をくぐって大学へと急いだ。  文化祭の開始は10時。  それまで今日の出し物の準備をすることになっている。  イベントサークルは毎年の如く、バーべキューの無料提供と活動のパネル展示を行うことになっていた。簡単なテーブルと椅子を準備し、モニターにメイン会場である講堂の様子を映し出しながら、そこでくつろいでもらう。  この催し物は毎年好評で、多くの学生や外部からの見学者が集う場所になっていた。
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