4.文化祭

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 昼はサークルに所属している部員総動員で、接客に当たった。焼きそばと飲料は有料だが、バーベキューは無料。みんな、そのことを知ると次々と客が押し寄せた。  僕も無我夢中で肉を焼き、振る舞った。しかしどんなに振る舞おうが、客足は途絶えなかった。  新しい肉が次々と運び込まれ、僕の横に置かれた。その光景を目で確認するたび、正直、一瞬だけ嫌気が差すが、そう思ってもいられない。  僕らは一心不乱に肉を焼いた。焼きまくった。10台あるコンロはフル稼働。朝、感じていた不安をきれいさっぱり忘れ、僕はノルマをこなすだけの機械と化していた。  昼の時間を過ぎると、客足は徐々に減っていった。無我夢中で焼き続けた肉は、その7割が姿を消し、初めて客足が途絶えた。 「柳田くん、ずっと焼きっぱなしでしょ?もう休憩に入っていいよ」  隣の先輩女子からそう言われ、僕は初めてトングを手から離した。その瞬間、両腕がどっと重たくなった。  現場を他の人に任せて、僕はひとまず隣の飲料売り場でスプライトを買った。席に着くなり、それをすごい勢いで飲み、椅子に持たれた。放心していた。  学祭を見て回る余裕はなく、学園祭の1日目が終わった。ひたすら肉を焼いた1日だった。
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