4.文化祭

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 簡単な会場準備を終え、文化祭2日目が始まった。さっそく肉を焼く音が聞こえ、遅れて香ばしい匂いが漂ってくる。  いつもなら食欲を誘われる匂いだが、さすがに今日は顔を背けたくなる。僕はメイン会場になっている講堂へと足を運んだ。  朝の講堂は空いていた。僕は講堂の中段、それも左の端に座り、今から始まるチアリーディング部の出し物を待っていた。  別にこれを見たかった訳ではないが、昨日の疲れもあり、ひとまず椅子に座って休みたかった。 「柳田くん」  僕は声のする方に視線を向けた。石嶺さんが手を振りながら歩いてくる。 「ひとり?」  そう言いながら、石嶺さんは僕の隣に座った。 「チアリーディング好きなの?」 「いや、別に。ただ肉の匂いはもういいかなって」  僕は苦笑いしながら答えた。石嶺さんは笑っていた。 「いよいよ今日だね」  石嶺さんは涼しい顔で言った。  小池さんが何をするか知っているのか?正直気になったが、問いただすのはやめた。何となく、聞いてはいけない気がした。  程なくして、会場の照明が暗くなった。煌々と照らされたステージにチアリーディング部が姿を現した。そしてけたたましい音とともに、パフォーマンスが始まった。
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