5.事 変

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5.事 変

 放送室の前には小池さんがいた。僕を見つけるなり、片手を上げて近づいてきた。 「うわっ。炭くせー」  小池さんはケラケラ笑いながら言った。  今から何を始めようとしているかは知らないが、この人はどうも緊張感というものがない。僕も思わず笑ってしまった。 「すいません。2時間ほど、肉を焼いていたもんで」 「いや、気にすんな。それより、もうすぐ出番だ」  放送室では各部や各サークルの代表者が集まり、10分程度、今の活動や部員募集のプレゼンを行うことができる。イベントサークルもその時間を活用し、活動の紹介をすることになっていた。  放送室と繋がっている撮影室から映像を配信し、大学の様々な場所に置かれたモニターで、それを映し出す。メイン会場である講堂はもちろん、廊下や僕が肉を焼いていた屋外にもモニターは設置されていた。  この後、小池さんが話す様子を僕が撮影することになっていた。何を話すかは分からない。  でもやるとしたらここだろう。  小池さんが龍人たちに物申すのは。
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