1.暴 動

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1.暴 動

 小池くんの事件を、私は夕方のニュースで知った。  正直、言葉を失った。同級生が亡くなるのは、初めてのことじゃない。高校の時、同じ学校の人が交通事故で亡くなった。  でも、今回のそれは常識を逸脱していた。マスコミは(こぞ)って、現代社会に対し、命を賭してメッセージを送った勇敢な若者として、彼を讃え報道した。 「理沙」  大学のベンチに座ってスマートフォンを見ていた私に、彼が声を掛けてきた。 「橘くん」  彼は私のところまで駆け寄ると、ベンチに座ることなく、立ったまま言葉を続けた。 「ニュース見たか?」  橘くんは少しだけ息を弾ませながら、言った。 「うん。たった今」  やり場のない、混沌とした気持ちを抱えたまま、私は答えた。
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