1.僕の話

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「謝れよ。俺たちを不快にさせたこと」  だらしなくブレザーを着た龍人の一人が、両手をズボンに突っ込んだまま言った。  僕に1歩近づき、睨みつける。僕はうつむき、その視線を逸らす。睨み返してはいけない。今は我慢するしかない。 「謝れっつてんだろ」  龍人は更に顔を近づけてきた。目の高さが同じくらいなので、相手の息が顔にかかる。  龍人は左手をポケットから出すと、僕の胸を突き飛ばした。僕はよろめき、情けなく尻もちをついた。2人の友達が僕に駆け寄った。その姿を見て、龍人たちは笑った。 「二度とあの店に来んじゃねーぞ」  そう言い残すと、龍人たちはニヤニヤ笑いながら去って行った。  僕は2人の友達に支えられながら、立ち上がった。1つため息をついて、僕たちはその場から動いた。  友達と別れて1人になって、しみじみ思った。  こんな世の中、生きる価値などないと。
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