2.参 戦

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 都市高を20分ほど走ると、石嶺さんは出口へと下った。そして海辺にある倉庫の前で車を停めた。  ここは港外れの埠頭。目の前には海が広がり、遠くには帰港するフェリーが見えた。何とも人工的な海だ。 「ちょっと待ってて」  石嶺さんはそう言うと、車を降りた。僕は誰もいなくなった車内で、ぼんやりと海を眺めた。  小池さんが亡くなって10日が過ぎた。あの日以来、各地で始まったデモはその範囲を拡大し、今や全国で行われるようになっていた。  激しいところでは、警官と衝突し、怪我人や逮捕者も出ているらしい。  正直、ここまで反響があるとは考えていなかった。強烈な印象を与えたのは間違いない。しかし、龍人たちを前にして、これまでの人が動き、叫ぶとは想像していなかった。  みんな鬱憤が溜まっていたんだ。それが今、爆発しようとしている。  それなのに、僕は…。  運転席のドアが開いた。突然耳に飛び込んできたその音に驚いて、僕は瞬間的に、ドアの方を振り返った。石嶺さんが戻ってきた。
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