2.参 戦

3/6
前へ
/119ページ
次へ
「そろそろ、動かなきゃダメでしょ。あなたも」  石嶺さんはハンドルの上に左手をおいて、正面の海を見つめたまま言った。 「ですね。いつまでもこのままじゃいられない」  でも、身体がうごかないんです。とまでは言えなかった。 「そう。だから連れてきたの。ここに」  石嶺さんは僕の方を向いた。 「今から、デモが始まる。それにあなたも参加して」  命令口調だった。  はっきり言って、乗らない。そういう気にはなれなかった。  しかしここまで連れてこられ、この状況で断れる人などいるのだろうか? 「わかりました」 「小池くんへの、せめてもの償いだと思って。彼の意志は、私たちが継がなきゃ」  石嶺さんの目が鋭くなった。  責任感。使命感。覚悟。石嶺さんを動かしている原動力はそれだろう。  小池さんがいなくなった今、その意思を継いで事を進めていくのは、自分たちしかいない。  そんな信念が、ひしひしと伝わってくる眼だ。  その気持ちはよく分かる。特に僕たちは小池さんに近い存在だったし。  そろそろ動きださなきゃ。  小池さんに叱られる。  龍戌制度を撲滅するために。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加