3.RとH

2/7
前へ
/119ページ
次へ
「昨日、石嶺さんを見かけたよ」  次の日、大学で橘くんに話した。 「イシミネ?」  橘くんは、その名字を完全に忘れていた。 「ほら高校の時、いたじゃん。眼鏡かけてて、成績はトップクラスなんだけど、すごく大人しくて…」 「あぁ、いつも俺と成績の上位を争ってた人だ。あまりに陰キャで思い出せなかった」  橘くんが言うのも、無理はない。それくらい、石嶺さんは目立たない存在だった。私も3年間で話したのは、1度か2度。  ただし、頭は良かった。橘くんに対抗できるのは、石嶺さんだけ。誰もがそう言っていた。  通算でどっちが勝ったかは知らない。本人たちも気にしてはいない。こういうのは周りが(はや)したてるものだ。 「で、その石嶺さんがどうしたの?」  橘くんはサンドイッチにパクつきながら、聞いた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加