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「昨日、石嶺さんを見かけたよ」
次の日、大学で橘くんに話した。
「イシミネ?」
橘くんは、その名字を完全に忘れていた。
「ほら高校の時、いたじゃん。眼鏡かけてて、成績はトップクラスなんだけど、すごく大人しくて…」
「あぁ、いつも俺と成績の上位を争ってた人だ。あまりに陰キャで思い出せなかった」
橘くんが言うのも、無理はない。それくらい、石嶺さんは目立たない存在だった。私も3年間で話したのは、1度か2度。
ただし、頭は良かった。橘くんに対抗できるのは、石嶺さんだけ。誰もがそう言っていた。
通算でどっちが勝ったかは知らない。本人たちも気にしてはいない。こういうのは周りが囃したてるものだ。
「で、その石嶺さんがどうしたの?」
橘くんはサンドイッチにパクつきながら、聞いた。
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