3.RとH

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 私は店を出て、その流れの中に入った。  この中から石嶺さんを見つける?  到底無理な話だと思った。行けども行けども、人ごみだ。こんな大勢の中から1人を見つけ出すなんて、砂浜に落したコンタクトを見つけるよりも難しい。  私は先を急いだ。この集団が向かう方向。そこに先回りすれば、もしかすると探し出せるかもしれない。  次々と人を追い越し、先へ進むにつれ、みんながどこに向かっているのか、大方見当がつき始めた。  庁舎前。  そこにはたくさんの人が集結していた。  そして門の周辺にはパトカーが何台も停まっている。警官が庁舎を囲み、機動隊も出動している。  私は少し離れた場所から、人々を見渡した。老若男女、いろいろな人がいた。  これが現実。小池くんは世間を動かした。彼の行動が、みんなの中に眠っていた火種に点火した。  そして今、その火は更に大きくなろうとしていた。
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