3.RとH

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 喧騒は少しずつ、その勢いを沈め、次第に集団は小さくなっていった。  霧が晴れるように、いつの間にか集団は姿を消していた。  私もそれに乗じて、駅へと向かった。  目的は果たせなかったが、デモを間近で見て、感じることができた。  そして世論が何を求めているのか、どういう世界を理想としているのかを垣間見た気がした。  いつもの信号で立ち止まる。すると1人の女性が颯爽と、私の前を通りすぎた。  私は叫んでいた。  その女性の後姿に向かって。  その女性は振り向いた。一瞬、誰だか分からないようだったが、しばらく私の顔を見ると、遠い記憶と結びついたようだ。 「新宮…理沙さん…だよね?」  その女性は、自信なさ気にそう言った。  やっと見つけた。石嶺ひかり。  これはまさに奇跡。
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