4.揺れる想い

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4.揺れる想い

 高校時代、彼女は分厚い眼鏡をかけていた。髪を後ろで1つに束ね、小さな体をコトコト揺らしながら、廊下の隅を歩いていた。  成績がいいこと以外、彼女に取り柄はなかった。そもそも存在感が薄かった。  それがどうだ?この変わり様は?    眼鏡はコンタクトに変わり、長かった髪はばっさり切って、ショートボブに。  コンタクトになると分かる。そんなに鋭い眼してたんだ。  かわいいっていうより、すっかりかっこいいお姉さんってカンジだ。 「よく分かったね。私のこと」  石嶺さんは帽子を脱ぎながら、ぶっきら棒に言った。 「で、要件は何?」  石嶺さんは話を急かした。 「ここじゃなんだから、ちょっと場所を変えない?」  ここは歩行者信号の前。人通りが多く、通行の邪魔になる。とてもゆっくりと話を聞ける場所ではない。  石嶺さんは帽子を深く被り直すと、私を手招きした。私は石嶺さんの案内に従い、そこから移動した。
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