4.揺れる想い

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 歩くこと15分。私たちは町から少し離れた埠頭に着いた。 「遅かったですね」  車の前で、男性が石嶺さんに声を掛けた。 「ちょっとね」  石嶺さんは私をちらりと見ながら、彼にそう言った。 「知り合いですか?」  その男性は私に軽く会釈した。私も社交辞令で会釈を返した。  ん…?この人どこかで…? 「高校の時の同級生。さっき、たまたま会ったら声かけられた」  石嶺さんは淡々と答えた。 「新宮と言います」  私は彼の顔を確認しながら、簡単に名字だけを名乗った。 「柳田です。どうも」  彼も同じく、名字を名乗った。  名前に聞き覚えはない。人違いか?  誰だっけ?絶対会った事あるんだけど。  そんなことを考え続けていると、次第に記憶が蘇ってきた。  思い出した!  高校生の時、電車でよく見かけてた人だ!  小池くんに殴られたのを心配して、私が声を掛けた。  しかし彼は、「僕は龍人が嫌いです」と言い残し、その場を去って行った。  そう言ってた彼だ!
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